『脳の活動の鍵は水 - 拡散MRIが開く未来』(SciencePortal),
では次に、私自身が発明した「拡散MRI(Diffusion MRI)」について説明したい。 拡散がなぜ起こるかの説明としては、アインシュタインの式というものがある。分子の不規則な運動(ランダムウォーク)という考え方を導入し、分子の変位を時間と関連付けた。この拡散現象をMRIに応用できるのではないかという考えが、1985年ごろ私の頭に浮かんだ。突起やタンパク質の塊のような障害物を、体内の水分子がどのように見ているかを知る方法があれば、外から見ている病変に関してもっと細かなことが分かるはず。個々の水分子を調べるわけにはいかなくても、分子の動きの軌跡が分かれば、そこから分子の出会った障害物に関する情報を引き出せるはず、という考えだ。
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では、拡散MRI画像は何に利用できるだろうか? まず急性期の脳虚血診断で、拡散MRIが初めて大々的に利用されるようになった。
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ただし、実際にその恩恵に浴しているのは脳虚血患者のわずか1%に過ぎないのが現実。日本やフランスのような先進国にはMRI施設も救急医療機関もそろっているのに、当の患者が脳虚血を自覚していないことが問題だ。