『広告で生まれる「ニセの記憶」:研究結果』(Wired Vision Japan),
この研究によると、鮮烈なイメージを与える広告は、それを見る人の海馬(長期記憶の形成に関わる脳の部分)をだまし、「テレビで見た場面」を「実際に起きたこと」と勘違いさせる上で驚くほどの力を発揮するという。
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そしておそらく最も厄介なのは、被験者たちがこの「作られた記憶」を、「現実の体験」として強い確信を抱いていた点だろう。彼らは、良い宣伝を見たからこのポップコーンが好きになったのではなく、食べてみたらおいしかったから好きになっていた。
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その謎を解くカギは、「記憶の再固定化」(memory reconsolidation)という、近年主張されている気掛かりな理論にある。
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すなわち、記憶とは、常に変わらない情報が蓄積されているわけではなく、常に変化する「プロセス」であることが明らかになってきているのだ。いわば、思い出すたびに書き換えられるファイルのようなものだ。何かを思いだせば思い出すほど、記憶の正確さは失われて行く。
記憶の確かさと感じられるものは、あくまで、それを最後に思い出した時点での確かさでしかない。記憶の元になった刺激が存在しないため、想起される記憶は変化している。そして、「実際に記憶している内容」から、「記憶したいと思っている内容」に近くなっていく。