シマウマの縞 蝶の模様 — エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(Carroll, Sean B. 渡辺 政隆・経塚 淳子[訳]. 光文社, 2007)についての簡単なメモ.

  • (ある程度)複雑な形態をした動物は,どれも共通の「マスター遺伝子」という「ツールキット」を持っている.
  • 同じツールキット遺伝子を持っていてDNAの塩基配列も良く似ているのに,それぞれの動物の形態が大きく異なる(ように見える)のは,発生の途上において遺伝子のスイッチが異なるタイミング,異なる場所でオン・オフされることによる.
  • DNAは(RNAへの転写を経由して)タンパク質を構成するための雛型であるが,人間の体にある約25000種類のタンパク質をコードしているのは,ヒトDNAの約1.5%だけである.そして残り約98%のうちの約3%が「調整遺伝子」である.
  • 調整遺伝子は遺伝子の産物(各種タンパク質など)が,いつ,どこで,どのくらい生成されるかを決める.そして,この調整遺伝子が雛型となり生成される物質が別の(調整|構造)遺伝子を雛型とした物質の生成タイミング・生成場所・生成量を決めるといったように,次々に影響していくことで最終的な動物の形態が作られる.
  • 複雑そうに見える生物の形態も良く観察してみると,ある基本パターンを少しずつ変更したものの繰り返しからできていることがわかる.これは,ある遺伝情報が繰り返して用いられるが,その(細胞の)位置や(発生における)時期により,生成する物質1がすこしずつ異なるものになるからである.

生物というのは本当に良くできたシステムだということが感じられてとても面白かったんだけど,うまく内容をまとめにくい. 「遺伝子は生物の設計図」というアナロジがあるが,設計図として家の平面図のようなものを思い浮かべるのは間違っており2,遺伝子の働きはもっと動的なものなのだろう…


  1. 最終的にはタンパク質. ↩︎

  2. 少なくとも,Evolutionary developmental biology(Evo-Devo)の考え方においては… ↩︎