『問題な日本語 その3』(北原 保雄[編著]. 大修館書店, 2007)を読んで,自分が勘違いして使(いそうな|っていた)ものがあったので,以下に挙げておく.
伝統的な用法と新しい用法1がある表現は,相手や場面を考慮して2使用しなければならないが,この本の編著者3は時代に伴う言語の変化を許容しているので「その用法は間違っている」とは述べていないことに注意すること.
- うちの奥さん
- 伝統的には,「奥さん」は他人の妻をさす尊敬語である.だから,「うちの奥さん」は奇妙な表現である.しかし,現在では「奥さん」は自分の妻をさす言葉としても広く使われている.
- (自分の妻をさす)嫁
- 伝統的には「嫁」は,1)息子の妻としてその家の一員となった女性,2)男性の結婚相手としての女性4, 3)他人の妻,をさす.だから,自分の妻をさして「嫁」というのは奇妙な表現である.ただし,自分の妻をさして「嫁」という用法は,西日本の方言としては一般的であり,その用法が全国に拡大しつつあるようである.
- 鳥肌が立つ
- 伝統的には恐怖・不快な状況を表わすときに用いる.しかし,若年層には感動・感激した状況を表わす用法もかなり広く受け入れられているようである.
- つなぐ / つなげる5
- 他動詞としての「つなげる」は,東日本に始まった比較的新しい用法で,西日本の人たちからは批判されることがある6.
- 〜をもちまして
- 「〜をもって」は助詞相当連語であり,このひとかたまりで固有の意味を持つ.だから,「〜をもちまして」のように,その一部を丁寧表現にすることはできない.
- (前につく語の度合・性質・傾向を持つことを表わす)め7
- 伝統的には,形容詞の語幹,動詞の連用形についていた.このところ,形容詞連体形,様態を表わす副詞,形容動詞語幹につくような表現8も見受けられるようになってきたが,このような表現は改まった文書・場面ではまだ使用を控えたほうが良い.