ファインマン計算機科学
『ファインマン計算機科学』(Feynman, Richard P. Hey, Anthony J.G. & Allen, Robin W.[eds]. 原 康夫・中山 健・松田 和典[訳]. 岩波書店, 1999)についてのメモ. Feynmanの講義ノートとテープをもとに編集者がテキストにしたものであり,内容を簡単にまとめてしまうことは難しいので,Feynmanによる序文で私が印象に残った部分を引用しておく.計算機科学は,実際には科学ではないという点でも物理学とは異なる.計算機科学は自然を対象として研究しない.数学的推論をかなり長々と使うが,数学でもない,計算機科学はむしろ工学のようなものである. (snip) しかし,計算機科学はすべて実用的で,現実の橋の建設のようなものだと言っているのではない.それはまったく違う.計算機科学は種々の深遠な問題に関わっている.われわれが理解していると思っていた言語の本質を,計算機科学は解明した.文法についての旧式な考え方では言語の基本的な要素のすべてをとらえることができなかったので,機械翻訳の初期の試みは失敗した.当然のこととして,この事実は計算可能性について,すなわち,われわれの身のまわりの世界について何を知ることができて,何を知ることができないかについて疑問に思うことを勧めている. (snip) とにかく,計算機科学には単に技術的な興味以上のものがあることがわかるだろう.それにしても,カリフォルニア工科大学とはいえ,この講義の対象が計算機科学専攻の学生だけでなかったということに驚く…